どーも元JA職員ゆかたん(@AgriBloger)です。
農協がつくった農家のための制度、「クミカン制度」を知っていますか?
主に北海道の農協で利用されている制度です。
簡単にいうと資金制度なんですけど、秋の収入が入るまでは資金不足になるひとがいるから、収入が入るまでの支出は支払えなくても大丈夫ですよってことです。
じゃあこれを使うとどう便利なんでしょうか。なぜ北海道で利用されているんでしょう?
一見するとお金がないのに口座を使えることから、クミカンは魔法の口座のように聞こえるんですが、デメリットはないんでしょうか?
今日はクミカンについて基本的なことを元農協職員がわかりやすく説明していきます!
今日のコンテンツ
クミカンのきほん
クミカンは「組合員勘定(かんじょう)制度」の略です。
農協では農協に出資しているひとのことを「組合員」と呼んでいます。
クミカン制度が北海道で利用されるのは、本州とはちがった北海道の農家の特殊性にあるんですよ。
北海道の農業は畑作中心
つまり「畑作物」ですよね。
野菜ももちろん作っていますけど、畑作の規模はケタ違いです。
じゃあ収入の面で野菜と畑作の面での違いはなんだと思いますか?
野菜っていうのは“即金性”があります。
出荷したらわりと早い段階で収入が入ってくるんですよ。すぐ消費されるからです。
それに、野菜って1回収穫したら終わりじゃないですよね?
タネをまくタイミングを変えて何ヶ月も連続して収穫するじゃないですか。
連続して収穫することは継続的に収入が入ってくるということになります。
でも畑作物はちがいます。
出荷してもすぐお金にはならない作物があって、秋収穫した作物の収入が入るのは年の暮れとか。冬に精算されるものも多いんですよ。
それに畑作物は一気にタネをまいて秋に一気に収穫します。
なので畑作物の収入が入るのは春にタネをまいてから半年後とか、長いブランクがあるんですよね。
春に支出、秋に収入が一気にくる

畑作の場合、春と夏に支出が一気にどーーーんと出ていきます。
肥料代、農薬代は農業でいちばんお金がかかるところです。○百万ってとんでいきます。ここはケチれません。
もともと資金が豊富な農家はいいですが、あまりに支出が出ていくと夏や秋に資金が足りなくなってしまう場合があるんですよね。
だから、秋に収入が入ってくる額を見込んで、収入が入るまでの支出を農協が立て替えるのがクミカンです。
立て替えるというか、支払い期限を先延ばしている感じもあります。
農協で買った肥料などの資材は支払いが秋や冬にされますね。
収入の見込み金額は、毎年12月に営農計画書を作成しているのでそこからひっぱっています。(ちゃんと審査もあるよ)
クミカンのすごいところは、収入の額がこれだけ入ってくるっていうのが農協側に認められれば、クミカン口座の残高が0円でもお金が引き落とされるところです。
残高がなくても買い物できる口座って感じです。不思議でしょ。
まあ1年単位で借りれるクレジットカードみたいな感じかな。
クミカンなら農協という一つの金融機関からお金を借りる形になるので農家さんの負担も減る部分はありますね。
クミカンの口座は1年単位
クミカンは毎年年末に精算されます。ここでマイナスになると翌年のクミカンが使えません。
年末っていうのは、畑作物や野菜の精算、国や都道府県からの補助金などが一気に入ってくる時期です。まあ支出も多いんですけどねw
これで収入と支出の清算をしてプラスになればいいですけど、なにか理由があってマイナスになればその分はどっかから埋め合わせしなくてはなりません。
精算が終われば翌年の営農計画を立ててまたクミカンがはじまる、ということになります。
クミカンはふつうの口座と同じ
特殊な口座だっていうのはわかっていただけたかと思うんですが、普通口座と同じように使うことができるんですよ。
クレジットカードやローンや公共交通料金などの支払いにも使えますからね。
家計費も落とせるんで、とにかく便利なんですよ。
もちろんクミカン口座は農協の正組合員(ある条件を満たした農家)しか利用できないですよ。わたしたちは使えません!
農家にとってのメリット・デメリット
メリットはなに?
先ほど説明した通り、収入が入ってくる時期が遅い農家には役に立つ点ですね。
クミカンを利用することによって、安定的な営農ができるということにあります。
家計費から農業経費まで一覧で把握できますし、農協職員も常にチェックしている(JAによりけり?)ところも挙げられますね。わたしはチェックしてました。
クミカンを使うと経営状況が農協に自動的に把握されます。
デメリットはある?
ひとによるんですけど、経営感覚が鈍るなっていうのが個人の印象です。
月ごとにクミカンの明細は届くんですけど、それすら見ないひといますからね。笑
経営が安定しているならいいんですけどね!
「クミカンで〜。」って言えばお金は簡単に落ちる。
予想外の修理や出費、税金が経営を圧迫していることに気づかずに、年末になって「あれ、マイナスになっちゃった」なんてことはよくあります。
お金がわいてくるような感覚になるけれど、別にわいてはきません。
あとは、予想以上に収入が少なかった年も要注意です。
不作だった、豊作貧乏だったときはツライですね。年越す前に落ち込むの嫌じゃないですか・・・なんもめでたくないし。
クミカンはあった方がいいのか
北海道の農協では、正組合員であれば比較的利用している方が多いと思います。
ですが義務ではありません。
クミカンは資金繰りのためにあるようなもんだし、自分の経営が潤っているなら必要ないじゃないですか。
十分に潤ってるひとも使っているひとは多いですけどね。
クミカンを使わなくても経営できるのが理想ですよね。でもなかなかそうもいかないし、農業は不安定な産業なので利用する人が多いんだと思います。
北海道でも利用していない農協もある
北海道ではメジャーなクミカン制度ですが、農協によってはそもそも利用していないところもあるんですよ。
富良野や士幌などですね。
北海道でもトップクラスの経営どころですw (懐が気になるw)
まああの辺りはなくていいわなって感じの場所なので、何も思いませんけどw
クミカンのきほんでした
ここまで分かればクミカンの一般常識は完璧です!さらっと今日のおさらいをしましょう。
- 北海道の多くの農協で利用されている
- 春や夏に収入の少ない北海道の農家に便利
- 支払いの遅いクレジットカードのような感じ
- 1年単位で精算している
- クミカンがなくても経営できるのが理想
でした!クミカンが廃止されるとかされないとか世間では議論になりましたが、北海道の農家はクミカンなくなったらどうなるんだろうってちょっと心配になりますね。
みんながみんな潤ってたらいいですけど。
クミカンの基礎に関連して、初心者に向けの農業本をまとめたので興味ある方はこちらもどうぞ。良著を揃えています▼

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